• 鳥害対策商品

気が遠くなる…地道な改良を積み重ねた太陽光パネル専用「バードブロッカー」

開発に着手する数年前──
ある日、戸建住宅の太陽光パネルの鳥害について相談が入ってきました。

鳥害対策商品メーカーのコーユーでは、鳥害に対するさまざまなお問い合わせをいただきますが、当時はまだそれらのお問い合わせの1つくらいに思っていました。
また、屋根の上の世界がよくわからないこともあり、当初は商品開発に躊躇していました。

相談件数が増加、開発に着手

ところが、年々太陽光パネルの鳥害に関する相談件数が増え、長年お付き合いしている工事業者さんからも商品化の要望が入るようになりました。

ちょうどその頃、次世代商品の必要性を感じていたこともあり、一念発起して製品開発に着手。まずはいろいろな方に話を聞いてみると、当時多くの鳥害の現場では、樹脂ネットを使い太陽光パネルの隙間を塞いでいたが、紫外線や強風で短期間で網が破けてしまうので困っている、とのことでした

確かに、太陽光の紫外線を大量に浴び、風雨にさらされる屋根上では、樹脂ネットはすぐに破けてしまうでしょう。太陽光パネルの防鳥製品で求められることは何か?鳥害対策専門のコーユーが作るとしたらどんなものか?社内で議論を重ねた結果、次のような項目が並びました。

  • 高い耐久性:破けず永く使えること
  • 高い防鳥性能:確実に防鳥を行い鳥のことは忘れて安心できること
  • あらゆるメーカーのパネルに設置できること
  • 太陽光パネルの保証が外れないこと(メーカーにより規定は異なる)

このほかにも、以下のような項目を考慮する必要がありました。

  • 太陽光パネルに不具合が生じないこと
  • 太陽光パネルのメンテナンス時に着脱が行えること

これまでの防鳥とは異なる難しさ

開発に手をつけたものの、何よりハードルが高く感じたのは、普段は手の届かない屋根の上の、全く知らない世界だったことです。最初のうちは、「知れば知るほどエラい世界に入ってしまった」と、気が遠くなるような感じがしたものです。

例えば、太陽光発電設備などに関わる人たちには当たり前なのでしょうが、太陽光パネルのフレーム形状には様々なタイプがあるということ。太陽光パネルが設置されている屋根材の素材や形状も現場ごとに違うこと。太陽光パネルの設置に用いられている架台も現場ごとに違うこと。とにかく考えたこともないことばかりでした。

つまりは「太陽光パネル下のスキマに鳥が入って巣を作ってしまう」ということだけが共通点であり、同じ環境、形状の現場は2つとない、ということがわかりました。

掴みどころのなかった太陽光パネルの防鳥問題の本質は、この「同じ現場はない」ということだとわかったところで、ようやくクリアすべき課題も明確になりました。

  • 高い作業性があること:千差万別の太陽光パネルの隙間にスピーディかつ柔軟に対応

が、クリアすべき項目に加わりました。

太陽光パネル専用という新ジャンルへの挑戦

当時、本格的な太陽光パネル専用防鳥商品はまだ世の中にありませんでした。
全くの白紙の状態から、自分たちで全体像を描いていかなければなりません。太陽光パネルの世界の全貌はまだ掴みきれてはいませんでしたが、防鳥を軸足にして考察していくと、耐久性の点から金属フェンスが必須であること、最適なフェンスがどのようなものであるかが鮮明になってきました。

そして、金属フェンスを堅牢に固定する方法と、屋根上の作業環境を考慮してスピーディで高い作業性が必要だと考えました。

また本来、防鳥工事はとても難しく、鳥の習性を熟知している必要がありますので、多くの場合、鳥害対策専門業者が工事を行います
しかし、太陽光パネルの防鳥は、パネル設置業者さん、メンテナンス業者さん、屋根工事屋さんなど、防鳥について専門外の方が関わることが多いため、誰が設置しても防鳥性能を発揮できるように考察と検証を重ねて試作品を製作しました。仮説に基づき、可動する試作品を手に、いつもお世話になっている工事業者さんと一緒に現場での検証を繰り返しました。

現場での新しい発見、改良の積み重ね

鳥害は高いところで発生するのが常ですが、通常の現場は足元が広かったり手すりがあったりするものです。しかし、戸建住宅の太陽光パネルはかなり違いました。
下から見ているのとは違い、屋根の上はとても高く感じて、登ると脚がすくみました。また、屋根は傾斜している上にとても滑りやすく、太陽光パネルが屋根いっぱいに載っていることも多いので、足の踏み場がありません。(余談ですが、身のこなしが軽い職人さんとは違って身体の固い自分は、無理な体勢で足がつったり関節が抜けたりと、鳥の問題以外に沢山問題を抱えながらの作業でした…)

とにかく、それまで知らなかった屋根の上の世界はとても広くて深く、足を踏み入れる度に多くの新しい発見があり、まさに未知の洞窟を探検しているような気がしました。
それまでの試作品で対応できない現場に遭遇した時は、「こんなこともあるのか…」と気が遠くもなりましたが、気を取り直し、解決できるアイデアをもとに試作品を持って何度も屋根に登りました。

試作品は改良に改良を重ね、あらゆる現場に設置可能なものになっていき、気がつけばいくつかの取り付けアタッチメントで構成されるようになりました。そうするうちに、試験施工した工事の経年での耐久性と安全性が確認され、ようやく正式発売へと漕ぎ着けました。

あとがき

実は当初考えていた商品名は、商標の規定で弁理士の先生からNGを出され困っていたのですが、妻がバレーボールから思いついた『バードブロッカー』が晴れて採用され、商品名となりました。

メーカーの人間がこんなことを言うのも何ですが、私は「商品は常に未完成」だと思っています。
世の中の価値観は常に変化していますし、環境も変わっていきます。バードブロッカーも皆さまに認知されご使用いただくとともに、「こうしてほしい」、「こんな現場に対応したい」、といった新しいご意見をいただきます。これからも常に製品の改良をし続け、“最新モデルが最良モデル”を目指して、皆さまと一緒にバードブロッカーを育てて行きたいと思っています

この記事を書いた人

この記事を書いた人

山本 剛司

(株)コーユー代表取締役社長。1984年の創業当初から業務に携わり、鳥害に関する経験を重ねる。2008年二代目として代表取締役社長に就任。
鳥害対策市場黎明期より培ってきた業界経験と豊富な知識を基に、鳥害対策のエキスパートとしてオリジナリティある新商品の企画、開発を行う。

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