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剣山タイプの鳥よけグッズをもっと効果的に使うには?

100円ショップやホームセンターでも販売している、剣山タイプの鳥よけマット。その針が並んだような特徴的な形状から「トゲトゲタイプ」、「剣山マット」、「針タイプ」、「スパイク」と呼ばれたり、鳥から建物を守るという意味で「鳥よけプロテクター」、「防鳥プロテクター」等とも呼ばれ、実に多くの商品が販売されています。このような樹脂製剣山タイプを発明したのはコーユーで、オリジナル商品「バードレスマット」はロングセラーになっています。

皆さまの中には既に鳥害に遭われ、ポピュラーな鳥害対策商品である剣山タイプについて調べている方もいらっしゃると思います。このコラムでは、鳩などの防鳥に向けて剣山タイプを使う場合の基礎と注意点を書いていますので、ぜひ鳥害対策の基礎知識としてお役立ていただければと思います。

剣山タイプを効果的に使うためのポイント

とても身近な剣山タイプですが、鳥害対策の第一歩として軽い気持ちで買ってみたものの「鳥害が解決しなかった」とか「かえって鳥害がひどくなった」ということもしばしば起こっています。
実はこの手のトラブルは、そのほとんどが「剣山タイプのセオリーを守らなかった」ことが原因です。少し厳しいようですが、防鳥を甘く考えてしまったがゆえにさらに大きな鳥害に発展させてしまった人為的鳥害ともいえます。それでは、こういった状況に陥らないために鳥害対策における剣山タイプのセオリーを詳しく見ていきましょう。

剣山タイプのセオリー

  1. 鳥害状況に合わせて最適な剣山タイプを選ぶ
  2. 鳥害が既に発生している場合は、15cm以上の剣山タイプで一気に対策する
  3. 鳥が飛んでくる側に隙間を作らない

鳥害状況に合わせて最適な剣山タイプを選ぶ

鳥害の起こる現場はまさに千差万別ですが、剣山タイプの鳥よけで失敗された方々に共通しているのは「現場や被害状況に合っていない剣山タイプを選んでしまった」ことです
鳥害現場というのは、同じ形状や状況ということはありません。被害の程度も軽微なものから深刻な状態まで幅広く、それぞれの場面で必要とされる剣山タイプの大きさや形状・防鳥性能は異なってきます。つまり、多様な鳥害に対して1種類の剣山タイプですべてをカバーするのはほとんど不可能ということです。

例えば、鳥害を引き起こす鳥の中で代表的なものだけでも、ハト、カラス、スズメ、ムクドリ(ヒヨドリ)、セキレイ、シラサギなど大きさも習性も全く違います。

また、鳥害のステージで考えてみても、

  • まだ鳥害はないが予防として
  • 鳥が飛来しはじめた
  • 鳥が住み着いて既に糞害がある
  • 営巣されてヒナ鳥がいる

というように、状況によって必要とされる防鳥性能が異なってきます。

剣山タイプは、こういった様々なことを総合的に考慮した上で最適な製品を選ばないと、確実な防鳥効果は得られません。それどころか、かえって被害を悪化させてしまうこともあります。
剣山タイプは針の高さで防鳥性能が異なり、大きく5cm/10cm/15cmタイプに分けられます。以下に鳥害の中でも特に被害の多いハトを例にしながら、それぞれのタイプについて解説します。

剣山タイプの針の高さによる防鳥効果イメージ
5cmタイプ…針の高さが5cm程度のトゲトゲ。ハトに対してはさらに被害を悪化させる可能性が高いです。
10cmタイプ…針の高さが10cm以上の剣山タイプ。ハト被害が発生していない場合は予防効果があります。既に発生しているハト被害への効果はあまり高くありません。
15cmタイプ…針の高さが15cm以上。予防目的は当然として、既に発生している鳥害に対しても高い効果が見込めます。

このように、ハトが対象の場合、それ以上被害を拡大させないためにも針の高さが5cm程度のトゲトゲタイプは使うべきではありません。ハトが対象の場合、効果を出すための最低ラインは針の高さが10cm以上ということになります。後ほど解説しますが、防鳥はスタートで失敗してしまうと、鳥の手強さがどんどん増し、素人には手がつけられなくなることが少なくありません。わからないことがあれば各メーカーさんに気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。

  • ※ヒナ鳥がいる場合や卵がある場合、巣の撤去を行うことは鳥獣保護法により禁止されています。管轄の役所に許可を得る必要がありますのでご注意ください

既に発生している鳥害には、15cm以上の剣山タイプで

先述の通り、既に発生している鳥害には15cm以上の剣山タイプを使うというのが鳥害対策の基本です。ここで忘れてはいけない重要なことは、15cm以上の剣山タイプで一気に対策することです。その理由を大きく2つに分けて解説します。

1:鳥の障害物突破能力は向上する

既に発生している鳥害現場というのは、言い換えると鳥にとっては居心地のよいお気に入りの場所で、まさに「そこに自宅がある」状態です。特に、長年棲みついた現場やひな鳥がいる場合などは一層強く巣に執着します。
こういった帰巣本能が強く働いている鳥にとって5cm程度のトゲトゲは、実に簡単に乗り越えられるものでしかありません。鳥害が発生している現場で5cm程度のトゲトゲタイプの効果がない理由はここにあります。 

2:大きな壁を一気に突きつけることで最大限の防鳥効果が引き出せる

既に鳥害を発生させ帰巣本能が強くなっている鳥たちを諦めさせるには鉄則があります。それは、その鳥たちが簡単には突破できない“大きな壁を一気に突きつけることで心理的・物理的な相乗効果を最大限引き出す“ことです
コスト優先で、簡単な鳥よけグッズを試したい方は少なくないでしょう。しかし、鳥にとって大した障害物にならないトゲトゲや、簡単に乗り越えられる針の短い鳥よけプロテクター等を小出しにしてしまうことは鳥害対策では御法度です。

その理由は、鳥たちが少しずつ上がるハードルを試行錯誤しながらクリアしていく内に障害物突破能力が向上してしまうからです。その結果、鳥の障害物突破能力が以前にも増してさらに深刻な鳥害現場を作り出してしまうことになります。
こうなってしまうと、専門業者に本格的に対策してもらうしか方法はありません。鳥害対策は15cm以上の剣山タイプで一気に対策する、という鳥害対策における剣山タイプのセオリーを守れば、鳥害が悪化することはありません。

鳥が飛んでくる側に隙間を作らない

注意するポイントは、針の長短だけではありません。鳥の飛んでくる側に隙間を作らないことも重要です。
少しでも隙間があると、足をひっかけて止まってしまうので、注意してください

マットとマットの隙間は、2~3cm程度は大丈夫です。

詳しくは、マンガでわかる鳥害対策の、「剣山式の鳥よけ②」をご覧ください。

5cm程度のトゲトゲは、鳥害を悪化させる可能性が

5cm程度のトゲトゲタイプの剣山マットは、効果がないどころか、ハトのような帰巣本能を持つ鳥に対してはさらに被害を悪化させる可能性が高く、防鳥効果が見込めません。
その理由は、鳥の帰巣本能にあります。強い帰巣本能を持った鳥たちは短針のトゲトゲを簡単に乗り越えてしまうだけでなく、そのトゲトゲを上手く使って枝や葉を引っ掛け、営巣のベースとしてさらに大きく丈夫な巣を作ってしまいます。

これではまさに火に油を注いでいるようなものです。むしろ、何も設置しなかった方が、枝葉が雨風で自然と流されたり飛ばされたりするので被害が進行しなくてよかった、ということになりかねません。5cm程度のグッズを使った現場で頻繁に発生しているトラブルですので、鳥害対策の基礎としてぜひ覚えておいてください。

効果のない鳥よけグッズを選ばないために

防鳥効果が見込めないものの多くは、“鳥よけグッズ”や“防鳥グッズ”として100円から数百円で販売されています。それらは軽量で、針が短く柔らかいものがほとんどです。
逆に、防鳥効果が高い15cm以上の剣山タイプは比較的高価ですが、鳥を完全排除するために長く丈夫な針が並んでいるのが特長で、結果として少々威圧感の強い外観となっています。
本コラムで紹介してきました15cm以上の剣山タイプは、失敗の許されない業務用として使われており、その防鳥性能と耐久性は鳥よけグッズとして販売されている5cm程度のトゲトゲタイプとは一線を画すものとなっています

まとめ

このように、色々あるトゲトゲ・剣山タイプですが、単なる針の長短といった外観やコストの違いだけでなく、それぞれを使った場合に、後々の効果・被害が変わります。5cm程度のトゲトゲは簡単に乗り越えられ、効果がないどころか鳥害を悪化させる可能性があるため、鳥害対策の専門家として最も避けてほしい商品です。

「剣山タイプは効果がある/ない」といった鳥害に遭われたであろう方々の情報を見かけることがあります。インターネットの普及も相まって、鳥害対策に関する情報が正しいかどうかわからないまま、それがあたかも真実かのように独り歩きしています。正しい情報が分かりにくくなってしまっていることに、長年、剣山タイプの開発に携わってきた一人としてとても憂いています。

鳥害対策の分野におけるプロ・専門家が積み上げてきた経験や知恵が正しい鳥害対策の知識として共有されなければ、という強い危機感を持って、このコラムでは一般の方々にも剣山タイプの防鳥についての基礎知識を解説しました。

本コラムは40年近く剣山タイプの開発に携わってきた経験に基づいていますので、現実に即した内容になっていると思います。当然、世の中には様々な現場が存在しますので、本コラムの内容が当てはまらないこともあるかもしれません。しかし、ほとんどのケースにおいて「剣山タイプのセオリー」を踏まえて対策すれば、鳥害の解決に向けて動き出すはずです。
防鳥が成功するかどうかは鳥害対策への意識と、はじめの一手がとても大切です。本コラムが、鳥害でお困りのみなさまに役立つことを願っています。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

山本 剛司

(株)コーユー代表取締役社長。1984年の創業当初から業務に携わり、鳥害に関する経験を重ねる。2008年二代目として代表取締役社長に就任。
鳥害対策市場黎明期より培ってきた業界経験と豊富な知識を基に、鳥害対策のエキスパートとしてオリジナリティある新商品の企画、開発を行う。

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